INTERVIEW: Her Self-nourishment

CITYSHOPコンセプター・バイヤー 片山久美子さん(後編)

Text&Edit:Eriko Azuma
Photo:Ko Tsuchiya

ファッションは、自分のアイデンティティ

SAYAKA Tokimoto-DAVIS(以下SAYAKA):久美子さんの産休中、Instagramにアップされるマタニティファッションを、久美子さんらしくて素敵だなと思いながら拝見していました。

片山久美子(以下片山):妊娠中は心も体も変化しますが、“自分らしさ”が変わってしまうと大事にしているアイデンティティが崩れてしまうような気がして…。いわゆるマタニティウエアを買わない。と決めて、妊娠中でもいかに自分らしいスタイルを楽しめるか、ということに密かに挑戦していました。レイヤードしてミックスするのが私のスタイルなので、 工夫次第でなんとでもなりました。パンツを履きたい時は、ファスナーを開けてボタンホールに輪ゴムをかけるという技を編み出してドレスやシャツをレイヤードしたり、SAYAKAさんのドレスも臨月まで着ていました。

SAYAKA:私のまわりでも「マタニティウエアはなるべく買わない」という声を聞きます。女性の生き方や働き方が変わって、今までは妊娠・出産=家庭に入って自分を変えなくてはいけないという意識がベースにあったのかもしれませんが、それが変化してきたのかもしれませんね。

片山:当時は無意識でしたが、やっぱり変わりたくないという思いを体現していたのかもしれません。それに限られた期間しか着ることができないものを必要以上に買いたくないという気持ちもあり、できるだけ手持ちの服でいつもと同じファッションを楽しみました。それは娘の服に関しても同じで、新生児の服はある程度用意しましたが、いただきものや友人たちのお下がりも活用しています。

SAYAKA:お子さんが産まれてから、ファッションやスタイルの変化はありましたか?

片山:妊娠中と一緒で、変わりたくないという意識が強いかもしれません。物理的に動きやすい服を選んだり、彼女にとって不快なものは着ないようにしていますが、自分らしいスタイルを楽しむために工夫をしています。例えばシルクやレース素材の服はスエットやジャンプスーツの中に仕込んだり、ガウンを羽織ったりして、娘を抱っこする時は「はい、このコットン素材によだれどうぞ!」みたいな(笑)。 やっぱり好きな素材やデザインのレイヤードを楽しむことで、自分のテンションも保てます。出産直後は余裕がなかったり、体型も戻らなくてファッションを楽しめない時期もありましたが、やっぱり私は、スタイリングをして好きな洋服をまとうことで、自分の芯を保っているんだなということに気付かされました。

SAYAKA:育児中は仕方ない。とおしゃれを諦めている方も多いかもしれませんが、久美子さんのように好きな服を下に仕込んでバランスを取るというのは素敵なアイディア。下着のように見えないおしゃれもいいかもしれませんね。

片山:自分に強さをくれる美意識のようなものは、自分が分かっていればいいこと。人のためではないと思うので、そういうものをそれぞれ見つけられたらいいですよね。我慢をするのは、私にとっても娘にとってもヘルシーじゃないと思うんです。とはいえ、こう見えても我慢していることもありますよ(笑)。その中でも自分のためにできることをしたほうが、娘とも楽しく過ごせる気がするんです。

ストーリーのあるジュエリーが、強さをくれる

SAYAKA:育児や仕事で忙しい中でも、自分のファッションやスタイルを大切にすることが、久美子さんにとっての“Self-Nourishment” になっているんですね。

片山:毎日身につけているジュエリーも、私にとっての“Self-Nourishment”なアイテム。ジュエリーは毎日同じものをつけたいタイプで、それぞれストーリーがあるものを厳選していますが、仕事中にぱっと目に入った時、そこから瞬時に力を得られます。
SAYAKAさんはNY、私は東京に住んでいますが、コロナ渦になる前はお互いの出張で1ヶ月半に1度くらいの頻度で会っていたので、こんなに長い期間直接会えないのは初めてのこと。これだけ会えていないと心細くなったりするのですが、以前作ってもらったSAYAKA DAVISのジュエリーをまとっていると、強くいられる気がします。ヴィンテージのジュエリーは、リスペクトしている友人がセレクトしたものだったり、いつか娘に引き継ぎたいと思って家族に買ってもらったエルメスのリングや誕生石のリングなど、一つ一つに大切なストーリーがあって、パワーをもらえるお守りのような存在です。

自分だけの小さなサンクチュアリを大切に

片山:もうひとつ、最近うちにやってきたヴィンテージの食器棚も私にとっての“Self-Nourishment”なアイテムです。食器棚って大きな買い物なのでなかなか選べなくて、ここ6、7年探し続けていたのですが、信頼する友人の協力により、ずっと探していたオランダのデザイナーCees Braakmanのヴィンテージを見つけて輸入してもらいました。
食器棚自体、眺めているだけで気持ちが満たされるのですが、上の飾り棚には食器を置かないと決めています。子供がいると家の中は荒れてしまうのですが、ここだけは余白のある、美しいディスプレイを保つようにしているんです。お風呂から出ると正面にこの食器棚があるのですが、気持ちが乱れている時も、毎晩この“余白の美”を認識することで、気持ちがゼロにリセットされます。“余白の美”という感性はSAYAKA DAVISのコンセプトにも通じるので、毎晩ちょっとずつSAYAKAさんのことも思い出しています。

SAYAKA:お写真を拝見してすごく素敵だなと思っていました。環境の乱れは気持ちにも影響するので、一角だけでも美しく保つというのは素敵なアイディアですね。

片山:空間の余白を目にすることで、心の乱れをリセットする。本当に小さな空間でいいので、自分だけのサンクチュアリを持つ。これが結構メンタルに作用して、自分らしさを保てるように感じます。産休前は仕事に追われて自分を大事にしていなかったのでは、ということに気づかされました。ありがたいことに子供を授かることによってお休みをいただき、少し立ち止まって自分を見つめ直すことができました。仕事に復帰したらまた走り続ける日々が始まると思いますが、このサンクチュアリを大切にすることが、自分を大切にすることにつながるような気がしています。
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