INTERVIEW: Her Self-nourishment

CITYSHOPコンセプター・バイヤー 片山久美子さん(前編)

Text&Edit:Eriko Azuma
Photo:Ko Tsuchiya

デザイナーへのリスペクトと熱い思いが企画の原点

SAYAKA Tokimoto-DAVIS(以下SAYAKA):久美子さんはいつも自由な発想でファッションも仕事も楽しんでいらっしゃる印象が強いのですが、そのインスピレーションはどこから生まれるのでしょうか。

片山久美子(以下片山):仕事に関しては、展示会で新しいコレクションを拝見したりデザイナーさんと話したりする中で自然にインスパイアされています。デザイナーさんのやりたいことと、私が日々生きている中で考えていることが会話の中で噛み合った時に、こんなことができるんじゃないかな。じゃあまずはリサーチしてみよう。という形で始まることが多いでしょうか。デザイナーさんは自らの血肉を注いでものづくりをされていますが、それは美しいだけではなく苦しい作業だと思います。私はゼロからものを生み出すことはできないので、デザイナーさんそれぞれのスタイルやフィロソフィーに敬意を払い、相談しながらものづくりをご一緒させていただいています。
【SAYAKA DAVIS for CITYSHOP】 VEGITABLE DYED DRESS
SAYAKA:2021年春夏にコラボレーションをさせていただいたベジタブルダイのドレスも、互いの思いが重なって生まれました。

片山:コロナ禍の混乱が残る2020年の8月に、SAYAKADAIVISの2021年春夏のコレクションを拝見し、環境に負荷をかけないものづくりへの取り組みに感銘を受けました。当時は初めての緊急事態宣言が終わりお店の営業がスタートしていましたが、これからどういうふうに生きていけばいいのかと、かなりナーバスになっていたんです。この状況下でファッションの仕事を続けていくにあたって私自身が模索していた方向が、SAYAKAさんと重なったように感じました。NYに住んでいるSAYAKAさんは日本にいる私たちよりも壮絶なロックダウンを経験していたと思うのですが、前向きなコレクションを拝見した時、自分の気持ちも相まって思わず泣いてしまいました。ものづくりに対するSAYAKAさんの揺れ動く気持ちと決意が、深く心に入ってきたんです。これをただ美しい服として店頭に並べるだけではダメだ、お客様にきちんとお伝えしなくては。と強く思いました。SAYAKADAVISのフィロソフィーを体現できること、地球にいいことをCITYSHOPとSAYAKDAVISらしく落とし込みたい。そう話し合って始まったプロジェクトでしたね。

SAYAKA:最初は草木染めなどの案もあったのですが、CITYSHOPさんならではの企画がやりかったので、デリカテッセンの野菜くずを活用できないか提案させていただきました。

片山:リサーチをする中で、私たちの思いを形にしてくれる研究所との出会いがあり、廃棄されるアボカドやレモンの皮、ケールの茎などを染料にすることが叶いました。その研究所に伺った瞬間ここだ!と思ってNYのSAYAKAさんにテレビ電話をしたんですよね。研究所の中も全部見ていただいて、色もその場で選んでいただきました。

SAYAKA:この研究所では、野菜や果物の色素に無害な科学染料を加え、ハイブリッドで染色しているんです。天然の染料だけでは表現できない、でも科学だけでは作れない色を表現できる。これってすごく今の時代にあっているしこれからの考え方としていいなと思いました。

片山:サマードレスなので安心して洗濯してほしいし長く大切に着てほしい。その思いをベジタブルの染料と科学の力で可能にしたハイブリットの手法が素晴らしいと、すぐに意見が一致しました。自然の力とテクノロジーを融合したものづくりは、今の時代にフィットしていますよね。色などのディテールはテレビ電話で何度も相談させていただきました。

SAYAKA:友人としての長いお付き合いと仕事のパートナーとしての信頼感があるからこそ、遠隔でも遜色なく、お互いの意向を反映したコラボレーションが実現したと思っています。

大切なことは続けること、思いを伝え続けていくこと

片山:私の産休中に代打でCITYSHOPのコンセプターを務めていただいた髙島屋の長尾悦美さんも共通の友人なのですが、この取り組みは続けていきたいと話し合って、SAYAKAさんに第二弾をご相談させていただきました。

SAYAKA:お話をいただいた時はすごくうれしかったです。何シーズンか続けて企画を煮詰めていきたいし、お客様にも時間をかけて伝えたいと思っていたので、二つ返事でお受けしました。

片山:コロナ禍を経験して、デザイナーさんも私たちお店も、服を楽しんでくださるお客様も、世界中の誰もが今までと同じ生活はできなくなりました。それによって大事なものがより明確になったと感じています。私の中でSAYAKADAVISは、一過性ではない普遍の美しさがあるかけがえのないブランドです。フィロソフィーに共鳴できるブランドさんとものづくりを続けていくことは、私にとって大事なこと。続けていくのは大変ですが、私たちが込めた思いがお客様一人一人にすとんと腑に落ちるタイミングは違うと思うんです。だから長い目で積み重ねていくことが大切なのではないでしょうか。

SAYAKA:サイクルの早いファッションの世界で「続けること」は難しいですが、大切なことだと感じています。片山さんはベジタブルダイの一番の魅力は何だと思いますか?

片山:植物や野菜が持つエネルギーやメッセージ、色の力は、目からはもちろん、肌触りなどの触覚からも入ってくるんじゃないかと思っています。自然界のものっていろんな光の屈折を受けているから、光の乱反射によって視覚からもリラックスや安心感を得られるんですって。本来捨てられてしまう野菜や果物のくずからそういう恩恵を得られるって素晴らしいことだし、しかもそれがSAYAKADAVISの美しいドレスにのせられている。何層にも素敵なことが重なった、今回のようなものづくりを大切にしていきたいです。

SAYAKA:そうですね、本当に同じ気持ちです。
片山:この企画を相談していた頃はパンデミックで大変な時でしたが、話の中で「自分を自分で癒すーSelf-nourishment―」というキーワードが出てきたんですよね。「この1枚のドレスで自分を慈しんでほしい」と、SAYAKAさんがひらめいたように言っていたのが印象的でした。

SAYAKA:これからどういうふうにものづくりをしていこうかと悩んでいた時期でした。久美子さんから企画をいただいて話しているうちに、「ああ、自分はこういうことがやりたかったんだ」と方向性が明確になった気がします。洋服を着ることは自分への愛情表現で、自分を大切にすること。SAYAKADAVISというブランドでそれを伝えていきたいと、このコラボレーションを通して気づかされました。

片山:私も同じように感じています。昨年のコラボレーションを終えて産休に入り、職場に復帰するタイミングで第二弾をローンチできた、この絶妙なタイミングにも感謝しています。

(後半に続く)
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